いつか猫になる日まで(原作:新井素子) / 第1話「夢」 登場人物 海野桃子(うみのももこ):成人女性。あだなは「もくず」。 明るい。ちょっと天然。普通の女の子。 森本あさみ(もりもと あさみ):成人女性。 落ち着いた感じ。モデル体型の美女。 女神:年齢不詳。(注意:台詞少ないです。) 海野桃子(もくず)M:そこは白い部屋だった。 みんな――あたし達六人は、円を描くようにひざまづいていた。 あたしの隣には、長身の男。穏やかで、自信に満ち溢れた顔。 さらっとした焦げ茶の髪は光線の具合によっては金色にも見えた。 彼の隣には女。 彼女のことは、知ってる。森本あさみ(もりもと あさみ)っていうあたしの親友だ。 長身でメリハリのついたモデル体型の正統派美女。 ゆるくウエーブがかかった長い髪にふちどられた顔は本当にきれいだ。 その隣には男。あ、彼も知ってる人だわ。 殿瀬和馬(とのせ かずま)君。小学校と中学校で一緒だった。 小柄で、いつも眉根を寄せていて、プラスティックの黒縁メガネをかけていて、何となく神経質そうで。 彼の隣には女。この人は知らない。 ストレートの黒髪のボブ。大きな眼、長いまつげ、しかし口元が妙に幼い。 そのアンバランスさが、また魅力的。美人というよりは、可愛いらしいって感じ。 その隣には男。この人も知らない。 やせこけていて、若干の無精ひげ。 しまりのない、にやにや笑いを終始浮かべている。 そして、ぐるっと一周回って、その隣はあたし、海野桃子(うみの ももこ)。 あたし達は、何かを待っていた。そんな感じがした。 ――ふいに気配がした。女神だ、と直感する。 女神は右手をさしあげた。すると、やおら出来上がる一本の道。 女神:お行きなさい。 海野桃子(もくず)M:ふいに女神はしゃべり出す。まるで歌ってるような声だ、と思った。 女神:一人は、統率を司る者。 一人は、情報。 一人は、技術。 一人は、生命。 一人は、攻撃。 そして今一人は切り札。 ・・・・・・お行きなさい。 海野桃子(もくず)M:視界が明るくなる。明るくなる。もう、目も開けていられない。 女神:お行きなさい。 海野桃子(もくず)M:そして、夢は終わった。 ☆☆☆ 森本あさみ:もくず。もくずちゃん。ちょっとぉ、もくず、いつまで寝てるのよ。 ・・・・・・もくずってば。起きて。 海野桃子(もくず):うー・・・・・・うん・・・・・・すーっ、すーっ(寝息を立てる) 森本あさみ:もくず。もう10時近いのよ。 海野桃子(もくず):・・・・・・うん。あ。・・・・・・え?あれ?あさみ?どうしてここに? 森本あさみ:もう、何、寝ぼけてるの?昨日、遊びに来て・・・・・・ 海野桃子(もくず):・・・・・・あ、そうそう。明け方までおしゃべりしてたんだっけ。 森本あさみ:おじさんもおばさんも、もう会社行っちゃったわよ。 朝ごはん出来てるから。 海野桃子(もくず):あさみが作ったの? 森本あさみ:ええ、勝手知ったるなんとやら、ですもの。 海野桃子(もくず)M:絶対、あさみ、いいお嫁さんになるわ・・・・・・ ☆☆☆ 海野桃子(もくず)M:あたしの名前は海野桃子(うみの ももこ)。 「もくず」っていうのはもちろんあだな。 どこの世界に「海野もくず」なんて凄い名前をつける親がいるかってのよ! 海野家の一人娘で、明日で二十歳になる。 あさみ――森本あさみ(もりもと あさみ)はあたしの親友。 幼稚園も小学校も中学校も高校も一緒の幼なじみで、なんと誕生日も一日違いっていう深い縁なのだ! さすがに、大学は違うけどね。あさみは絵を描く人だし、あたしは翻訳やりたかったし。 森本あさみ:はい、コーヒー。これは猫舌用。 トーストはバターとアプリコットジャムのやつね。 卵は半熟になってるはずだし・・・・・・。 海野桃子(もくず):さすが、あさみ。あたしの好み、丸わかり。 森本あさみ:何年、一緒にいるとおもってるのかしら?(軽く笑う) 海野桃子(もくず):ありがと。あさみはまたコーヒーだけ? 森本あさみ:ええ、朝はおなかがすかなくて。 ・・・・・・あ、あ、もくずちゃん。あなたそんなにジャムつけて、太るわよぉ。 海野桃子(もくず):いいの。あたし、部分的に太りたいんだから。 海野桃子(もくず)M:あさみ位きれいな体をしてれば現状維持が大事だろうけど。 あたしの場合、もうちょっと胸が太ってくれないと困る。 森本あさみ:でも、そううまくいくかしら。 ウエストばっかり太ったら悲劇ですもの。 海野桃子(もくず)M:・・・・・・話題を変えようっと。 海野桃子(もくず):あのね、今日、あさみの出てくる夢を見たよ。 森本あさみ:あら、あたくしももくずの出てくる夢をみたわ。 海野桃子(もくず):あさみとねぇ、殿瀬君と、後知らない人が出てくんの。 森本あさみ:殿瀬君? 海野桃子(もくず):そう。ほら、あの、中学の時の。 森本あさみ:あ、わかった。わりと小さなメガネの人ね。 海野桃子(もくず):小さなって、そりゃあさみが大きすぎんのよ。彼、165はあるよ。 海野桃子(もくず)M:あさみは170だもの。170でヒールの高い靴を履けば、たいていの男の人は小さく見えてしまう。 森本あさみ:殿瀬君の出てくる夢・・・・・・ね。 (ちょっと、考え込む) あたくしが見たのもそんな夢だったわ。ねえ、ちょっと「見ても」いい? 海野桃子(もくず):どうぞ。 海野桃子(もくず)M:あ、これ言っておかなきゃね。 あさみは精神感応が出来る――つまりテレパスなの。 生まれつきのものらしく、いまのところ、彼女の特殊能力をしってるのはあたしだけ。 なんかね、あさみにいわせると、あたしの精神構造、相当変わってるらしい。 どこがどう変わってるのか、ぜんぜんわかんないけど。 とにかく、そんなあたしだからこそテレパスだって知っても平然としてられるんだそうだ。 普通の人なら、そんなことしったら精神的恐慌状態に陥るだろう、とあさみは言う。 そのため、あさみは特殊能力をひた隠しに隠している。 森本あさみ:ふう・・・・・・。あたくしの夢とまるで同じだわ。「流入」したかな。 海野桃子(もくず):「流入」、ひさしぶりかもね。 森本あさみ:起きてるときは、読んだり読まなかったりコントロールできるのにねぇ。 寝ているときは抑制がきかないから。 近くの人の夢が流れ込んできちゃうときがあるのよね。 実害はないけど、困ったものだわ。 ・・・・・・ま、いいか。ねぇ、そろそろ出かけない?もう11時になるもの。 海野桃子(もくず):そうだね。行こっか。第2話に進むいつか猫になる日まで・目次に戻る